「ほら、やっぱり怯えられてるじゃんかー」



「…うっせぇ」



「朱雀くん相変わらず無愛想ねー。うちの明、怖がらせないでよ?」


「…」



「…黙るなっての…そーいや神崎ー」



天宮くんと咲楽は、二人で喋り始めた。

…あの人、朱雀くん、って言うんだ。

…怯えてるのとは、少し違うんだけどな…。




「…あ、あの」



思い切って前にいる朱雀くんを見上げて、声をかけてみる。

朱雀くんは、少し気だるそうにしていたけど、こっちを向いてくれた。



…こっちを向いた時の、冷たいひんやりとした眼に…思わず、息を飲む。





「…なに」



「…え、えと、その…」





…どうしよう。

…何言えばいいんだろ。

思わず、声をかけてしまったけれど…話す内容が、思いつかない……。




「…」




朱雀くんは無言でこっちを見ている。

は、早く何か…言わなきゃ…。












ーーーー何、いらねぇの












…あ。


そうだ。

まだ、何も言ってなかった。




「朱雀くん」






ちゃんと、言わないと。





「さっき、は」






助けてくれた、お礼…ちゃんと、言わないと。








「ありが、とう」







声が小さくて聞き取りにくかったかもしれない。



もしかしたら余計なことだったのかもしれない。









…でも、どうしても……ちゃんと朱雀くんの目を見て、お礼が言いたかった。




あの時、助けてくれたことが…凄く、嬉しかった、から。