「ほら、早く行ってよ~」


「あ…ぇ…?」



戸惑ったような声を上げる、そいつ。



初めは笑顔を浮かべてた女子達は、次第にイラついてきたのか表情が剣呑になって来ている。




リーダー格の女は、そいつを睨みつけたあと、まじまじとそいつを見つめた。




そいつは、居心地が悪そうに首をすくめる。



やがて、「あぁ」と女が思いついたように笑った。



…何とも、不気味な笑顔で。

「ねぇねぇ、貴方もしかしてさ。…この生徒手帳の持ち主?」

「…あっ…!」



目を少しだけ見開き、手を伸ばす。

その手を女が掴む。



「っ…そ、れ…私、の…」

「あー、やっぱりそっかぁ!ならさ、これ返すから、早くそこからどいてくれなーい?」



下卑た笑みを浮かべる女に、思わず顔をしかめかける。

…あぁ、めんどくせぇ。なんでいっつもこんなことに…。










パラッ



「…?何これ」

生徒手帳から、一枚の写真が落ち、それを女が手に取った。
女の手を振り払おうとしていたそいつは、一瞬で真っ青になった。



「!やっ…返して…!」

「だぁーかぁーらぁー、そこどいたらかえすってばぁ。これ、大事なもの?」

ひらり、ひらりとそいつの頭上で写真をふる女。




…ふつふつと、自分でも分からない《何か》が沸いてくる。



「返してっ…お願…っ…」



みるみるうちに、そいつの純粋なその眼に涙が溜まっていくのを見て。


俺は、体が勝手に動いていた。