「せんせぇー、ちょっといいですかぁー?」



前の方から、甘ったるい声が聴こえた。




「ん?どうしたんだ」



担任は、そいつの方を見て首を傾げている。



「えーっと、実はぁ、皆が、席替えしたいらしくてぇ。今から、席替えしませんかぁ?」


…始まった。舌打ちしそうになるのを何とか抑えて溜息をつく。



もはや俺にとって、新年度の恒例となっている、コレ。





「…席替え?お前ら、まだその席初日だろー?変える必要なんて…」

「親睦を深めよ〜、みたいな?ね!みんな、いいよね~?」

周りの奴らは、これから何が起こるのか、分かっているんだろう。頷いている。
前の方を見ると、晴人が溜息をついていた。

「…まぁ、お前らがいいって言うんなら、止めないが…んじゃ、HRは席替えな。」

そう言うと、担任は教室の外へ出ていった。