少年院を出てから俺は、夜の世界に飛び込んでキャバクラのボーイをしていた。

かつては建築の仕事に携わりたいと考えた時期もあったが、前科者という重い鎖を背負った人間が、まともな仕事なんてできるわけがなかった。

外に出たあとの俺の生活は荒んでいて、何もかもがどうでもよかった。

そんな俺がボーイの仕事を続けて3年経った頃のことだった。

『ちょっと君、いいかな』

テーブルの片付けをしていた俺は、店に来ていた客に声をかけられた。
振り向いたらその人はたまにくる若いお客さんで、確か大手の会社の副社長だって女の子たちが騒いでいたっけ。

『はい、どうされましたか?』

高そうなスーツや時計を身につけたその男は、爽やかな笑顔で笑う。
その笑顔でどれだけの女を落としてきたのだろう。

『君に頼みがあるんだ。少し話ができないかな』

僕は不思議に思いながらも片付けを中断し、立ち上がる。
その客は人が少ない廊下の方へ俺を連れていき、話を切り出した。