「す~み~かっっ、おはよ!!」

「おはよう、美鈴ちゃん!」

こいつは柳原美鈴。澄香の一番の親友らしい・・・・
黙っていれば美人だと思うのにしゃべりだすと台無し。澄香の事が大好きで男子からの告白を
ことごとく断っているらしい。前に澄香がどうして断るのか聞いてみたことがあった。その理由は、
「澄香取る時間が無くなっちゃうから。」
だそう。流石の俺でもその理由はすごいと思ったよね。
まぁ、澄香を思う気持ちは負けてないけどね。

「今日も可愛いね、ほんと食べちゃいたいくらい~」

おいおい、その発言はやばいだろ(笑)女子が女子に言うセリフではないことは確か。

「そんなことないよ。美鈴ちゃんの方が可愛いし、美人だよっ」

ホントに無自覚、鈍感・・・・
柳原が呆れた顔をしている。
まぁたぶん俺と同じことを考えているのだろう。

「ちょっと、池田、この無自覚をなんとかしなさい。」

「無自覚だからこそいいんじゃない?」

「あんたがそんなんだからいつまでたっても澄香は自分が可愛いって事に気づかないじゃない!」

なんだその理由は(笑)
自分が可愛いと気づいて欲しいのか(笑)
でも、俺はその方がいい。そのまま変わらないで欲しい。
だから、あえて澄香が学年で一番可愛いと言われていることを言わない。
言っても、「そんなことないよ」で終わるかもしれないけど、言わない。

「澄香はそのままでいいんだよ。ね?」

「う?うん!私はそのままがいいんだよ?」

何その反応。可愛すぎ。焦りすぎ。抱きしめたくなる。

「そういえばさ、噂で聞いたんだけど、池田って好きな人、いるの?」

「いるよ。」

そういった時に澄香の顔を見た。

今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「どうしたの、澄香」

そう言おうとした時に、

「おーーーーはよーーーーっっっ、三人さん!!」

後ろから来た寺沢愁によってさえぎられてしまった。

「来た来た、うるさいのが。おはよ。」

「おはよう、寺沢くん!」

澄香の顔をもう一度見たけど、さっきの泣きそうな顔は消えていた。何だったのだろうか。すごく気になる。後で聞いてみるか。

「今日もテンション高いね、愁。」

「当たり前だろ!?テンション上げてないと学校何て行けないわ(笑)」

「まぁ、確かに。」

こいつは寺沢愁。
クラスの人気者。普段はお茶らけて見えるが、困っている人には声をかけて助けるし、相談も親身になって聞いてくれる。そして納得のいくアドバイスをくれる。
俺が唯一本当の自分を出している相手でもある。
俺は、自分が信頼できる人としか仲良くしない、素を出さない。もちろん言い寄ってくる女子なんて論外。前に澄香に「もう少し構ってあげたら?」何て言われたことあったけど、あり得ない。俺が澄香以外の女子と話すなんて。
そう考えると俺も柳原と同じだよな・・・・

「皆、早く教室に行かないと遅刻しちゃうよ!」

澄香がそう言って皆を促した。

あの悲しい顔はいったい何だったのか気になりながら授業を受けるのであった。

澄香side

「池田は好きな人いるの?」
まさに私が一番気になっていることを美鈴ちゃんが
ゆうちゃんに聞いていた。ゆうちゃんは何て答えるのかな・・・・
ドキドキしながら聞いていると、
「いるよ。」
私が一番聞きたくない答えが返ってきた。
頭の中が一瞬にして真っ白になった。と同時に悲しみが一気に押し寄せてきた。涙が出るのを必死に抑えるのが精一杯だった。
「だれだれ?」と、嬉しそうに聞ける心中ではなかった。
ゆうちゃんが何か言いかけたけど、寺沢君が来たから聞けなかったけど、今は寺沢君が来てくれて良かったってちょっと思ってる。だってこんな泣きそうな顔、ゆうちゃんに見せたくない。困らせたくないから。だからいつも通りでいよう。そう思って悲しい気持ちをぐっと押し込めた。
私が一番知りたくなかった答え。
この関係も終わってしまうのかと思ったらまた悲しくなって授業が頭に入ってこなかった。