「……雪、激しいな。止む気配ねえし、交通機関止まるんじゃねえの?」

先生は、小窓の脇にある臙脂色の二人掛けチェアに腰を下ろしてスマホを見る。
私は、止まない雪を眺めるのをやめて、すぐ近くで座っている先生を見た。

「どこもダイヤ乱れてる。ラッシュ時に大変だな」

気の毒そうに言いながら先生はスマホをポケットに戻す。

「私もすぐには帰れそうにはありませんね……」
「まぁ、すぐに解除されるだろう。ここで少しゆっくりしていけばいいんじゃないのか」

先生は、湯呑みを二つ取り出して、ティーパックの緑茶を淹れてくれた。
臙脂色のチェアに二人並んで湯呑みを持つ。

「あつ……」

恥ずかしながら、熱々が苦手な私は、すぐには飲めずにテーブルに戻す。
先生は平気な顔で飲みながら、ふっと吹き出した。

「猫舌かよ」
「はい……」
「冷えたものばかり飲んで、体を冷やすなよ。女子は温めないと」
「はい……」