言葉をなくして立ち竦んでいる私を見て、先生はそのメモをまた、すぐに折りたたみ、ぐしゃりと握りつぶす。

「全然、忘れてねえよ。」

くしゃくしゃにしたメモを見ながら、先生が呟いた。
あれは、その場しのぎの約束じゃなかったんだ。

「……卒業したら、すぐ行きます……っ」
「あーもう、泣くな。俺が泣かせてるみたいだろ」

先生の影が近づいて。
一歩下がると先生の机があって逃げられない。
もっとも、逃げる気はないけれど……。

唇が近づく。

先生の吐息も伝わって、私の震える唇が大人の唇に塞がれる。
もっとこうしていたいと願った瞬間、すぐに離れて、ぽんと頭を撫でられた。

「まあ、そういう事だから……チョコありがとな」

先生はやっぱり普通だ。
こんなキスまでしているのに、顔色が変わらないなんて。

私は今きっとゆでダコのようになってるはず。