「手紙も入ってるのか」
「あっ、それはおひとりの時に読んでいただけたら! って、ぎゃーっ、私の前で開けないで下さいっ」

私の訴えなど全然聞いてくれていない先生。
すぐに手紙を開封して目を通している。
目元に睫毛の影ができて、色気にどきりとした。

夜中に書いたことだから、今見られるととても恥ずかしいし、もうっ……!

「じゃあ、……あのっ、失礼します」
「おい。待て。今返事やるよ」
「えっ?!」

先生は、手紙とチョコを持ち、教官室のドアを開けた。
黒い傘は年季の入った傘立てに放り込まれる。

ついていっていいのか迷いながら、先生の後を追い、水色の傘を同じ傘立てに突っ込む。


昨日の晩、私が書いた手紙の内容は。
大好きだという思いと、「雨の日の言葉、忘れてませんか」という質問。

私の思いは変わっていない。
むしろ、どんどん膨らんで抑えられないのに、あの日の出来事が、氷上先生の一時の気の迷いだったらと思うと立ち直れない。