キキィ！！！

バスがまた急ブレーキをかけた。

「あっ…すいません」

「チッ！！」

一つ結びをしている若い女性はぶつかってしまったらしく謝ったのだが、若くて不良っぽい男性に舌打ちされた。

わざとじゃないのに…ひどい……。


そういえば私もさっき謝ったのに、嫌な顔をされて……。

あっ……。

……だから…ですか？

「あの…隣…座ってていいですか？」

「………」

彼は何も言わず窓の外を眺めたままだったが、ずっと彼に握られていた手は外された。

「ありがとうございます…」

「………」

ありがとう……。

私のために、隣に座らせてくれて……。

これで、嫌な思いをまたしなくて済んだよ……。



本当……優しいんだね……。