家に帰っても、ずーっと遠藤くんと真琴先輩のキスが頭から離れない。

私には関係ないのに。いきなりあんなのを見ちゃったから驚いただけなんだ。

「大丈夫...」

ブブッブブッ

「誰だろ...あ、未奈乃」

【バイト先の割引券貰ったの!明日バイト休みだから放課後食べに行こ!(`・ω・´)キリッ】

私は、LINEの内容なんて無視して、未奈乃に電話をかけた。

『もしもし?どうしたの! 』

「...未奈乃ぉぉぉぉ」

私は今までの全てに吹っ切れたのか、未奈乃の声を聞いたとたん、今まで張っていた糸が切られたかのように泣き出してしまった。

『えっ!?なに!?どうしたの!?』

いつの間にか、遠藤くんのことが頭から離れなくなっていたこと。白石さんのこと。真琴先輩のこと。すべて洗いざらい未奈乃に話した。

ずっと私ばかり話していたから、ものすごくマシンガントークだったと思う。ごめんね未奈乃。

『そんなことがあったんだね...ごめんね、バイト続きで聞いてあげられなくて』

「ううん...聞いてくれてありがとう...」

鼻をすびずびしながら、私は話すのを終えた。やっぱり、未奈乃にが一番安心して話せる。こういう友達がいるって本当に幸せ。

『怪我は大丈夫なの?』

「うん、そんなにひどくないから大丈夫」

『でも遠藤、真琴先輩と付き合うことにしたんだ...なんでだろう。まあ、唯一のマネージャーだし可能性もなくはないけどさ。遠藤みたいなのが、あんな男遊びして、そんな人と付き合うなんてね』

「きっと私たちには分らない魅力が、真琴先輩にはあるんだと思う」

『そうかぁ?ただただ、イケメンと付き合いたいだけにも見えるけどなぁ』

「まあ、それもあるとは思うけど...」

『でも本当に...キスするとこ見ちゃったとか、災難だったね』

「うん...こんな今更、自分の気持ちに気付いたって、もう遅いんだけどさ」

『あたしは本当に引っかかってる。本当に遠藤が、好きで真琴先輩と付き合ってるのかどうかってこと』

「だって、キスしてたんだよ?そんなの、本気以外の何物でもなくない?」

『いやいや、男なんてそんなもんだって』

「そ、そうなのかなぁ...遠藤くんも...」

『あっ、ごめん!お風呂空いたから入ってこないと』

「うん、いってらっしゃい」

『また明日話聞かせてね!バイト休みだから、うちの店でご飯食べながら!』

「楽しみにしてる!」

『おやすみ!』

「おやすみ!」

未奈乃にたくさん話を聞いてもらったから、今日は安心してゆっくり眠れそう。ありがとう未奈乃。明日学校に行ったら週末だから、何とか頑張ろう。