高校生初日から遅刻しそうになった俺は、その日も自転車を猛スピードでこいでいた。



誰もいない桜並木の坂を駆け上っていけば、ゆっくりと歩くピンク色のカーディガンを着た小さな背中が視界に入った。



…背丈的に、俺と同じ1年生だろうか。



"それじゃあこの人も遅刻じゃないか"と思い、



「おい、走んねぇと遅れんぞ!!」



とその背中に叫んだ。



するとふわりと髪をなびかせながら振り返った小さな背中。















瞬間、俺は息をすることを忘れた。

















大きくて吸い込まれるような茶色い目。




透き通る白い肌に桜色の頬。









それは、今までに見た事のないほどの『美少女』だった。








彼女は一瞬驚いたような顔をした後、うつむいて言った。



「しっ心配して下さってありがとうございますっ! でも、大丈夫なので。」



ぺこりと頭を下げて、今度は少し急いで歩いていく。



あ、今ちょっとつまずいた。



俺はその背中を見つめてクスッと笑い、無意識に呟いていた。














「桜…」