それから数日間、俺は夕暮桜親衛隊のやつらから送られてくるアツーい視線に耐え続けた。
そんなある日登校してチャリをとめていたら、見えたピンク色のカーディガン。
今日こそは、挨拶する。
いや、でもこの間はそんな考えて無かったけど名前聞かれただけで挨拶すんのも変か?
いやでも話したいし。
いやでも…
もんもんと色々考えてついに決心する。
よし、挨拶しよう。
あくまで自然に。自然にだ。
こんな考えての挨拶じゃなくて。
ドクン… ドクン…
あー! 心臓うっせぇよ!!
落ち着け。 っと、変な格好してねぇよな?
歯磨きもしてきたし、大丈夫だ。
って俺、乙女かよ…
若干自分の脳内が乙女っぽいことにガッカリしたが、今はそれどころではない。
大きく深呼吸をする。
周りから見たら相当変なやつだろうが、そんなの関係ない。
よし、いくぞっ!
後ろから通りすがりに声をかける。
顔が熱いのは知らないふりだ。
「さっ桜先輩! おはようございます!!」
くそ、声上ずった。
まあ、挨拶出来ただけ進歩だ。
すると、桜先輩は目を見開いたあと、ポっと桜色の頬を赤く染めた。
そして絞り出すような小さな声で言った。
「おっおはよう…!」
そのまま駆けて行ってしまう先輩。
なんだろう、このひったくりに合ったあとのような感覚は。
盗まれたのは、心か。
ってクサすぎかよ俺。
鳴り止まない心臓。
思わずその場にしゃがみこむ。
と、バシッと誰かに背中を叩かれた。
「おっはー! オトメン陽太くん!!」
後ろを振り向けば、そこに居たのは塁。
…ちっ、見られてたか。
「うは、顔真っ赤〜! あのモテモテ陽太くんがなぁ〜」
「うっせぇよ、塁。」
「まあ、それだけ夕暮先輩に本気だってことだろ? いいじゃねぇか。 進歩だよ、陽太。」
「そう、だな。」
確かに恋愛にいい加減だった俺にしてはこんな本気になるなんて凄いことだ。
俺が1番驚いてるよ。
こんなにハマるなんて思わなかった。
にしても…
「接点ねぇーなぁー!」
俺が桜先輩に会えるのは朝か偶然廊下ですれ違ったときくらい。
それ以外では俺が勝手に見てる程度だし…
なんか俺ストーカーみてぇだな…
「まあ、しゃーないよね。 学年違うし…
てか、自分から会いに行けばいいじゃん! 陽太らしくないなぁ。」
…確かに、そうだ。
「本気、だからな。」
「本気だからこそ攻めてかないと。 夕暮先輩可愛いんだから、ほかのやつに取られるぞ。」
そう、だよな。
『よし、塁! 昼休み、2年の教室行くぞ!』
『あ、俺は付いてくの前提なのね笑』
『だって、なぁ?いいだろ、塁?』
『はいはい。 分かりましたよ、陽太サマ!』