田中 修一 様
拝啓
いかがお過ごしですか。
あなたがこの手紙を読んでいる、と言うことは私はもうこの世に居なくて、タナカさんが真実を見つけたってことですね。
優秀な刑事さんだから、この手紙にたどり着くのは案外早いことだと思うけれど。ね、タナカさん。
改めて、タナカさんと過ごした一週間、本当に楽しかったです。
タナカさんは私に忘れかけていた少女のようなときめきや、温かい気持ち、ときに本気になってぶつかることを、教えてくれた気がします。
優輝を殺したのは私ですが、凶器のナイフを“わざと”捨てたのも、何故一週間と言う日にちも沈黙していたのかも、それはすべてご想像にお任せします。
敢えて言うならば複雑な乙女心、と言うところでしょうか。
もう乙女って言う歳じゃないのにね。
私、タナカさんと過ごせた一週間とても幸せでした。
最期に素敵な想い出をありがとう。
いつまでも“タナカさん”と呼ぶのは変なことだけど、私あなたの本当の名前知らないし。それに今更他の名前を呼ぶことはちょっとくすぐったくて
私の中でタナカさんは永遠にタナカさんなのです。
だからタナカさんと呼ぶことをお許しください。そして優輝のご家族の方に多大な悲しみと苦しみを与えたこと、警察方々にご迷惑をお掛けしたこと深くお詫び申し上げます。
こんな酷い女で申し訳ございません。きっと私はあの世にも地獄にも行けず、この世で魂だけが留まってしまうのではないか、と考えています。
けれどそれでいいのです。
私はこれから優輝と一緒に永遠に二人で居るのだから。
ありがとう。
そして永遠にさようなら
タナカさん
20xx年1月28日 城戸 冬華



