だから、人魚は誰も近づかない。
けれども、アサヒは違った。
なぜって、
その船がまとっている人魚は全て、
燃えるような赤いヒレをしていたからだ。
それに引かれたからもあるが、
その船に乗っている人のなかで、
それはそれは美しい青年がいた。
彼は、いつも優しく笑い、
仲間にとてもすかれていた。
アサヒは、
それをとても羨ましく思うなか、
もうひとつ、ちいさな感情を抱いていた。
それがなんなのか、
本人にすらわからない。