結姫が死んで10年。

あの日、僕は初めて人のために泣いた。

今までは悲しいと思うことはあっても人前で泣くことはなかった。

初めて人のために何もしてあげられなかったという後悔をした。

いつもうるさいみんなが静かなのも気持ちが悪かった。

だからみんなに会うのが嫌だった。

あのとき結姫の死、そしてみんなから逃げようとしていた。

けれど結姫からの手紙を読み、逃げることをやめた。

『ありがとう』という言葉で少し軽くなったから。

みんなもきっと同じだったのだろう。

いつものうるさいみんなが戻って来たときは正直嬉しかった。



それからみんなはそれぞれの進路を考え始めた。

僕は何になりたいというものがなかった。

けれど

『勉強できるんだから先生になったら?』

『お前には先生しかねえ』と言われるようになった。

こんなことを言われたら先生になるしかないでしょ

だから先生を目指すことにした。

それから大して努力をせず、教員免許を取得し5年前に高校の教師となった。