私は部屋に戻るとすぐにベッドに潜り込んだ。
早見夏月。
なぜだろうか。彼に何か不思議な違和感を感じて怖くなったのだ。
‐‐‐♢♦♢‐‐‐
華澄の私を呼ぶ大きな声で毎朝目が覚める。
「ほーんと、ヒカは朝弱いよねえ!」
「・・・おはよ。」
目を擦りながらゆっくりと体を起こした。
華澄は、容姿に相当のこだわりがある。私と違ってメイクも髪型も毎日完璧だ。
今日も私より1時間早く起きてセットしていたようだ。
私はそんな華澄を横目にさっと髪を束ねるとマスカラとビューラー、最後にリップを塗って終わり。
5分も掛からない最低限の身支度だ。
身支度を終えて制服に着替えた私たちは1階の食堂へ向かった。
今日も相変わらず不機嫌そうな顔をした園長がやってきた。
隣に、早見夏月を連れて。
施設の全員が彼を視線で追った。
当の本人はその多くの視線に照れるように笑ってヘラヘラとしている。
園長は見下ろすような視線で私たちを見回すと口を開いた。
「マキバ養護施設から来た早見夏月。」
施設から?
てっきり家庭からやってきたと思っていた私は驚いた。
「華澄、日花里、秦、竜雅。お前らと同学年だからここのこと全部教えてやれ。」
園長の無責任さに溜息が出る。
「まじ?うちらと同いなんだってさぁ!」
「らしいね~。」
華澄はこっそり周りよりさきに朝食に手を付けながら目を見開いた。
「わかったらさっさと食って学校行け。休むんじゃねぇぞ~。」
親と離れ離れになり孤独を感じている子供が多いというにも関わらず施設の園長は子供に対して愛を注げようとはしてくれない。
この施設は二つの棟に分かれている。
一つは小学校4年生以下の棟で、もう一つが小学校5年生以上高校3年生以下の棟。
小さな子供を相手にする西棟の園長のほうがまだましだ。
やっぱりこんな歳にもなると反抗期の子供も多くなるため可愛げもなにも感じられないのかもしれない。
ただ、そんな大人がいるせいで大人という存在を信頼できなくなる子供がいるのだって事実だ。
私は、朝食を食べ終えると、部屋に戻って急ぎ足で準備をする。
しばらくすると、華澄も部屋に戻ってきて二人で高校へ向かう。
「そういえば夏月くん?うちらと同じ高校らしいよ。」
「そうだろうね。あの園長のことだから一つの学校に無理やりまとめこみそうじゃない。」
華澄は私の呆れた顔を見て笑って言った。
「相変わらず冷めてんねぇ~!」
華澄は私のことを冷めているというけれど華澄が熱すぎるだけできっと私は健常者。
華澄の手元のスマホがヴーヴーと音を立てた。
「あ~、まぁたこいつか。」
おもむろに華澄の表情が渋くなった。
首を伸ばしてスマホの画面を覗いてみる。
「石川・・・?誰?」
華澄はスマホを私から避けてニヤリと笑った。
「どっかのIT企業の社長~。」
「・・・一応聞くけどそんな人と知り合ってどうすんの?」
華澄とは9歳の時から一緒なんだからもちろん知り合ってどうするのかなんて分かりきっている。
心のどこかでそうでないことを祈りながら。
「大人のお遊び♡するためよ~。」
まるで小悪魔のような笑顔で髪をなびかせながら私の一歩手前を歩いた。
「はぁ・・・。いい加減そんな適当な付き合いやめなよ~。」
これでこのセリフも何回目かわからない。
小走りで華澄の隣に並びなおす。
「うんやめる。」
「え?ほんと?」
即答された想定外の答えについ足がすくんだ。
足の止まった私に気づいた華澄が振り返ると悪戯な笑顔を見せていった。
「石川さんは、ね♡」
「え。」
華澄はまた前を向くと軽くスキップをしながら校門を通って行った。
「他にもお相手はいっくらでもいるからねぇ~♡」
「はああぁぁ?!」
早見夏月。
なぜだろうか。彼に何か不思議な違和感を感じて怖くなったのだ。
‐‐‐♢♦♢‐‐‐
華澄の私を呼ぶ大きな声で毎朝目が覚める。
「ほーんと、ヒカは朝弱いよねえ!」
「・・・おはよ。」
目を擦りながらゆっくりと体を起こした。
華澄は、容姿に相当のこだわりがある。私と違ってメイクも髪型も毎日完璧だ。
今日も私より1時間早く起きてセットしていたようだ。
私はそんな華澄を横目にさっと髪を束ねるとマスカラとビューラー、最後にリップを塗って終わり。
5分も掛からない最低限の身支度だ。
身支度を終えて制服に着替えた私たちは1階の食堂へ向かった。
今日も相変わらず不機嫌そうな顔をした園長がやってきた。
隣に、早見夏月を連れて。
施設の全員が彼を視線で追った。
当の本人はその多くの視線に照れるように笑ってヘラヘラとしている。
園長は見下ろすような視線で私たちを見回すと口を開いた。
「マキバ養護施設から来た早見夏月。」
施設から?
てっきり家庭からやってきたと思っていた私は驚いた。
「華澄、日花里、秦、竜雅。お前らと同学年だからここのこと全部教えてやれ。」
園長の無責任さに溜息が出る。
「まじ?うちらと同いなんだってさぁ!」
「らしいね~。」
華澄はこっそり周りよりさきに朝食に手を付けながら目を見開いた。
「わかったらさっさと食って学校行け。休むんじゃねぇぞ~。」
親と離れ離れになり孤独を感じている子供が多いというにも関わらず施設の園長は子供に対して愛を注げようとはしてくれない。
この施設は二つの棟に分かれている。
一つは小学校4年生以下の棟で、もう一つが小学校5年生以上高校3年生以下の棟。
小さな子供を相手にする西棟の園長のほうがまだましだ。
やっぱりこんな歳にもなると反抗期の子供も多くなるため可愛げもなにも感じられないのかもしれない。
ただ、そんな大人がいるせいで大人という存在を信頼できなくなる子供がいるのだって事実だ。
私は、朝食を食べ終えると、部屋に戻って急ぎ足で準備をする。
しばらくすると、華澄も部屋に戻ってきて二人で高校へ向かう。
「そういえば夏月くん?うちらと同じ高校らしいよ。」
「そうだろうね。あの園長のことだから一つの学校に無理やりまとめこみそうじゃない。」
華澄は私の呆れた顔を見て笑って言った。
「相変わらず冷めてんねぇ~!」
華澄は私のことを冷めているというけれど華澄が熱すぎるだけできっと私は健常者。
華澄の手元のスマホがヴーヴーと音を立てた。
「あ~、まぁたこいつか。」
おもむろに華澄の表情が渋くなった。
首を伸ばしてスマホの画面を覗いてみる。
「石川・・・?誰?」
華澄はスマホを私から避けてニヤリと笑った。
「どっかのIT企業の社長~。」
「・・・一応聞くけどそんな人と知り合ってどうすんの?」
華澄とは9歳の時から一緒なんだからもちろん知り合ってどうするのかなんて分かりきっている。
心のどこかでそうでないことを祈りながら。
「大人のお遊び♡するためよ~。」
まるで小悪魔のような笑顔で髪をなびかせながら私の一歩手前を歩いた。
「はぁ・・・。いい加減そんな適当な付き合いやめなよ~。」
これでこのセリフも何回目かわからない。
小走りで華澄の隣に並びなおす。
「うんやめる。」
「え?ほんと?」
即答された想定外の答えについ足がすくんだ。
足の止まった私に気づいた華澄が振り返ると悪戯な笑顔を見せていった。
「石川さんは、ね♡」
「え。」
華澄はまた前を向くと軽くスキップをしながら校門を通って行った。
「他にもお相手はいっくらでもいるからねぇ~♡」
「はああぁぁ?!」
