溜息と同時に私は視線を下にやった。
え・・・。
私はつい眉間にしわを寄せた。
ベランダの柵から身を乗り出して外の玄関を見た。
誰・・・?
この施設の者ではない誰かが玄関に座り込んでいた。
怪しい者ではないかと私は急いで部屋に入ってベランダの扉を閉めた。
「ねえ、華澄っ・・・!!」
ベッドで携帯を握りしめながらスヤスヤと眠る華澄が見えた。
私は玄関の怪しい者に怯えながらも歯を食いしばってベッドへもぐりこんだ。
「・・・。チッ。」
怯えたままで眠れるわけもなく私は勇気を振り絞ってもう一度ベランダへと向かった。
もう一度柵から身を乗り出してみる。
「やっぱりいるぅ・・・!」
俯いていて全く顔が見えなかったが体格や服装からして同い年くらいだと分かった。
それだけでなぜか恐怖心が和らいだ私は一階へと階段を降り、玄関の前で立ち止まった。
扉の鍵はかけたまま人影に向かって声を振り絞った。
「だ・・・だれ、ですか・・・?」
扉の向こうで私の声に驚いてビクッと動いたのが見えた。
「あっ・・・。今日から施設に入るはずだったんですけど。」
今日から?
「明日じゃなくて?新しい人は明日くるって聞いてたけど。」
私はいつの間にか扉に向かって普通に話しかけていた。
「えっ?!俺っ、今日のはずなんだけどな・・・。」
気づけば扉の鍵を開けていた。
視線をおろせば困ったような笑顔で笑いかける男の子がいた。
「そんなところにいたら邪魔だから。」
私は名前も何も知らない彼の腕を握った。
すると彼はニヤッと笑うと私の手を握り返してきた。
「ありがとう。」
なんだか女の子に慣れてそうな雰囲気に嫌悪感を抱いた。
私はすぐに彼の手をそっと振りほどき中へ案内した。
「園長に言うと面倒だから、今日は誰かの部屋で寝させてもらって。」
彼は周りの部屋を通る度に覗きながらついてきた。
私はそのまま彼を男子の部屋のあるフロアへ連れていき部屋をノックした。
「…」
「返答、ないけど。」
「うるさい。」
イタズラっぽく笑いながら言う彼がなぜか気に食わなかった。
そもそも私はもっと誠実そうな人がいい。
どちらかというと苦手なタイプだ。
「秦?竜雅?」
扉の向こうに問いかけると足音が響いて扉が半分開いた。
「なんだよ。」
彼は滝野龍雅(たきのりゅうが)。
「秦は?」
「どうしかした?」
イヤホンを耳から外してのぞき込む彼が浦岡秦(うらおかじん)。
「俺!早見夏月(はやみかづき)!よろしくな!」
彼が自己紹介をしてそういえば名前を聞いていなかったと気が付いた。
秦は嬉しそうに笑ってベッドから立ち上がった。
「新しい人か!よろしくね。」
竜雅は顔色を変えずに彼をじっと見つめて口を開いた。
「明日だろ。なんで今いんだよ。」
「それがなんか・・・手違いがあったらしくて園長とこの人の間で間違ってたみたい。」
彼は照れるようにニッと笑った。
「とりあえずそういうことだから。部屋、どこか分かんないし今日はここで寝させてあげて。」
秦はさっそく部屋のテーブルを端に寄せて歓迎した。
竜雅は溜息を小さくついて道を開けた。
「なるほどね。ほら、入って入って。」
秦の歓迎に彼は目を輝かせて喜んだ。
「せんきゅー!」
私は彼が部屋に入ったのを確認して部屋の扉をしめようとした。
その瞬間不可逆的な力で扉がまた開いた。
「君も。ありがとう。」
彼はそう言ってすぐに部屋へ戻った。
私は不覚にも胸のざわめきを感じつつその気持ちをかき消すように急いで部屋へ戻った。
え・・・。
私はつい眉間にしわを寄せた。
ベランダの柵から身を乗り出して外の玄関を見た。
誰・・・?
この施設の者ではない誰かが玄関に座り込んでいた。
怪しい者ではないかと私は急いで部屋に入ってベランダの扉を閉めた。
「ねえ、華澄っ・・・!!」
ベッドで携帯を握りしめながらスヤスヤと眠る華澄が見えた。
私は玄関の怪しい者に怯えながらも歯を食いしばってベッドへもぐりこんだ。
「・・・。チッ。」
怯えたままで眠れるわけもなく私は勇気を振り絞ってもう一度ベランダへと向かった。
もう一度柵から身を乗り出してみる。
「やっぱりいるぅ・・・!」
俯いていて全く顔が見えなかったが体格や服装からして同い年くらいだと分かった。
それだけでなぜか恐怖心が和らいだ私は一階へと階段を降り、玄関の前で立ち止まった。
扉の鍵はかけたまま人影に向かって声を振り絞った。
「だ・・・だれ、ですか・・・?」
扉の向こうで私の声に驚いてビクッと動いたのが見えた。
「あっ・・・。今日から施設に入るはずだったんですけど。」
今日から?
「明日じゃなくて?新しい人は明日くるって聞いてたけど。」
私はいつの間にか扉に向かって普通に話しかけていた。
「えっ?!俺っ、今日のはずなんだけどな・・・。」
気づけば扉の鍵を開けていた。
視線をおろせば困ったような笑顔で笑いかける男の子がいた。
「そんなところにいたら邪魔だから。」
私は名前も何も知らない彼の腕を握った。
すると彼はニヤッと笑うと私の手を握り返してきた。
「ありがとう。」
なんだか女の子に慣れてそうな雰囲気に嫌悪感を抱いた。
私はすぐに彼の手をそっと振りほどき中へ案内した。
「園長に言うと面倒だから、今日は誰かの部屋で寝させてもらって。」
彼は周りの部屋を通る度に覗きながらついてきた。
私はそのまま彼を男子の部屋のあるフロアへ連れていき部屋をノックした。
「…」
「返答、ないけど。」
「うるさい。」
イタズラっぽく笑いながら言う彼がなぜか気に食わなかった。
そもそも私はもっと誠実そうな人がいい。
どちらかというと苦手なタイプだ。
「秦?竜雅?」
扉の向こうに問いかけると足音が響いて扉が半分開いた。
「なんだよ。」
彼は滝野龍雅(たきのりゅうが)。
「秦は?」
「どうしかした?」
イヤホンを耳から外してのぞき込む彼が浦岡秦(うらおかじん)。
「俺!早見夏月(はやみかづき)!よろしくな!」
彼が自己紹介をしてそういえば名前を聞いていなかったと気が付いた。
秦は嬉しそうに笑ってベッドから立ち上がった。
「新しい人か!よろしくね。」
竜雅は顔色を変えずに彼をじっと見つめて口を開いた。
「明日だろ。なんで今いんだよ。」
「それがなんか・・・手違いがあったらしくて園長とこの人の間で間違ってたみたい。」
彼は照れるようにニッと笑った。
「とりあえずそういうことだから。部屋、どこか分かんないし今日はここで寝させてあげて。」
秦はさっそく部屋のテーブルを端に寄せて歓迎した。
竜雅は溜息を小さくついて道を開けた。
「なるほどね。ほら、入って入って。」
秦の歓迎に彼は目を輝かせて喜んだ。
「せんきゅー!」
私は彼が部屋に入ったのを確認して部屋の扉をしめようとした。
その瞬間不可逆的な力で扉がまた開いた。
「君も。ありがとう。」
彼はそう言ってすぐに部屋へ戻った。
私は不覚にも胸のざわめきを感じつつその気持ちをかき消すように急いで部屋へ戻った。