「お兄ちゃんっ!人が倒れてたっ」

「なに?人?」

お兄ちゃんを引っ張って寝室へ連れて行くと、ベッドで眠る彼の姿があった。

「イチゴ畑で倒れてたの。・・日本人、みたい」

「日本人!?・・そりゃ、めんどい奴つれてきたな・・まぁいいや。魔法で治せそうだし」

「本当!?」

「ああ。・・・汝、水と森を守る神よ・・・」

呪文を唱えたかと思うと、彼の顔色がみるみる良くなっていき、ついに目がゆっくりと開いた。

「良かった!目が覚めたわ」

「・・・・ここは?」

「ここはふぁんたしあ王国。俺はリタで、こいつはリマ。お前は、栄養失調みたいで倒れてた。名前は?」

「・・・颯太。」

「ソータか。じゃ、あとで食い物もってくるからそれまで寝てろ」

お兄ちゃんは部屋から出て行って、私とマロ、ソータだけになった。

「ねぇ、何でここに来たの?」

「・・・・魔女?」

「そうだけど・・」

魔女のこと、知ってるの?

「魔法使いのことについて知りたくて。興味あったから」

興味だけで、こんな遠いところに一人で・・・?
嘘ついてる。顔に、親子喧嘩って。

「噓。親となんかあったんでしょ」

「っ!やっぱ、魔女だ。くく」

「なっ・・うるさいわよ。教えて」

「そのうち。・・・綺麗な髪・・」

私の髪は確かに銀色で、特徴的。魔女っぽくないって、言われるけど。魔女の髪色は基本的に黒だから、私の銀色はかなり珍しいみたい。
まぁこの髪は生まれつきじゃなくて、魔法でそうさせられただけなんだけどね・・。五歳の時、おまじないをしたらこうなってしまった。何故かはわからないけど。

「わ、私もう行くからっ。ゆっくり休んで」

「分かった。ありがとう」

ソータの笑顔に不覚にもドキッとしてしまって、すぐに顔をそむけた。なんで、人間なんかに・・・恥ずかしい。
顔が赤いのを隠しながら部屋を出る。階段を下りていると、お兄ちゃんが腕を組んで立っていた。

「お兄ちゃん・・?」

「リマ、あの男はやめとけ」

「はっ?やめとけって・・私そんなつもりじゃ」

「リマが思ってなくても、ソータが思ってるかもしれない」

「どうして・・そんなこと」

「リマを思ってだ。人間を簡単に信じるなって、父さんも言ってただろ」

お父さん・・・そんな言葉聞きたくない。私たちを捨てて、あの人と駆け落ちしたお父さん。・・小絵さんっていう、人間を信じた、お父さんなんか。

「結局人間を信じたのはお父さんだよ?なんでそんなこというの。お兄ちゃん変だよ・・」

お兄ちゃんはこんなこと言う人じゃなかったはず。
お父さんのこと一番に恨んでた・・・なのに。

「・・・ごめん、リマが大事すぎて。もう傷つけたくないんだ」