明希ちゃんの背中でうとうとしている希紗ちゃんに声をかける。


「希紗ちゃん、今日はありがとう」


「またあそぼうねぇ、ヒロちゃん」


「……っ」


私の人差し指をぎゅっと握り、向けられたのは思いがけない言葉だった。


私は、希紗ちゃんを楽しませてあげられたのだろうか。

また、なんて、そんな約束をしてもらえるほどに……?


なんて答えたらいいかわからず、思わず言葉を詰まらせていると。


「希紗もこう言ってるし、また遊んでくれないかな、ヒロちゃん?」


不意に明希ちゃんの穏やかな声が降ってきて、私は顔を上げた。


視界に、目元を緩めた明希ちゃんの大人びた表情が映る。


「…………」


言い聞かせられた子どもみたいにこくりと頷くと、ぽんぽんと優しく頭を撫でられた。


「それから、俺にもちゃんと構うこと」


……だれかを信用せずに生きていきたい。


だけど、明希ちゃんがくれる優しさを、すべて嘘だと疑うことができない。

違う、私は疑いたくないんだ。



──その日、街には大雨が降り注いだ。