知らず知らずのうちに下唇を噛みしめていた、その時。

こちらに駆け寄ってきた希紗ちゃんが、明希ちゃんのズボンの膝元をせがむように揺らした。


「にぃに、おんぶ〜」


「んー? 眠くなっちゃったか?」


目をこする希紗ちゃんの前にしゃがみ込み、明希ちゃんが希紗ちゃんをおぶった。


目の前で繰り広げられるやりとりに、そこでやっと我に返るように心が解放される。


「今日はヒロにもコタにも、いっぱい遊んでもらったもんな」


「うん……」


希紗ちゃんは相当眠いのか、小さな手でごしごしと目をこすっている。


「……あの、家、すぐそこだからここで」


「家まで送ってくよ?」


「ここを曲がってすぐのところだから、大丈夫」