そんな私の心の機微に気づいたらしい。
希紗ちゃんがぱああっと笑顔を咲かせた。
「ヒロちゃん、いっしょにあそぼ〜!」
「あっ」
希紗ちゃんが私の手を引いて走りだす。
そしてブランコのところまでやってくると、ぴょんっとブランコに飛び乗った。
「希紗ね、ブランコがいちばんだいすきなんだ!」
「押してあげる」
押す側を申し出ると、希紗ちゃんはさらに笑みを深めた。
「やったあ! ありがとうっ、ヒロちゃん」
小さな背中を、優しく押してやる。
少しでも力の入れ方を間違えたら、折れてしまいそうな華奢な背中。
力加減はこれくらいで大丈夫だろうか。
「わ〜! たかーい!」
「大丈夫?」
慣れないことに、心なしか不安になって尋ねると、そんな不安をもろともしない希紗ちゃんの明るい声が帰ってくる。
「ヒロちゃんがおしてくれるから、たのしい〜っ」
汚れを知らない希紗ちゃんのまっすぐな言葉に、ほわっと心が軽くなる。
苦いコーヒーの中に、角砂糖が落ちてきてじわっと溶けていくような、そんな感覚。


