重箱を抱え、過去に想いを馳せながら教室への道のりを歩いていると、私はふと前方に美術準備室を見つけた。


美術準備室が眼前にあるという視覚の情報により、今自分がいるのが旧校舎だということに気づく。


考えごとをしていたせいだろうか、教室棟ではなく旧校舎に足を踏み入れてしまったらしい。

どおりで、まわりの景観がなんとなくさびれていて静かだと思った。


旧校舎に立ち入ることはほとんどと言っていいほどないけれど、美術準備室に関しては、数年前新棟の設立と同時にこちらの美術室が取り壊され実質の物置状態になり、準備室も使われなくなってしまったと風の噂で聞いている。


私は腕の中の重箱に視線を落とした。

待っていましたと言わんばかりに、ぐーとお腹が音を立てる。


どんなに気分が落ちていたって、お腹の調子だけは通常運転なのが、自分の体のことながらなんとも恨めしい。


だいぶお腹も空いたし、自分用のお弁当は別に教室に置いてあるけど、どうせ空いてるならここで食べてしまおう。

急な閃きが、その場の勢いで私の足を動かした。


教室棟ではないから、人通りは少ない。

見つかり咎められる可能性も低いはずだ。