「今日もお人形さんみたいに可愛いな〜。
ねぇねぇ、付き合ってよ。未紘ちゃん」


「ごめんなさい。彼氏がいるから」


「えっ……」


偽彼効果は、抜群だった。


毎朝毎朝つきまとってきて煩わしかったクラスメイトをひとり撃退。

そして告白してきた隣のクラスの男子をひとり撃退。


そうして朝からのたったの数時間で、4人も撃退してしまった。


だめ押しは、明希ちゃんという存在。


「相手はだれ?」としつこく問われ、明希ちゃんの名前を出せば、一瞬にして顔をひきつらせ「あいつかよ」と一様につぶやく。


この「あいつかよ」には、観察する限り2種類の意味があるようだった。


ひとつは、あいつが相手じゃ敵わないという諦め。

そしてもうひとつは、なんでよりによって不登校のあいつなんだよという困惑。


旧校舎の美術準備室にいるということはやはり知られておらず、不登校という認識がされているということがなんとなくわかった。


明希ちゃんを取り巻く環境も、なんだか穏やかではない。