「待って、明希ちゃん……っ」


教室棟を出て、旧校舎の階段裏に来たところで、私の呼びかけに明希ちゃんが立ち止まった。


「どうしてあそこに明希ちゃんが……」


「美術準備室から、ちょうどヒロが囲まれてるのが見えたから」


というか、今は違う。

言いたいことは、それじゃなくて。


「あんな、彼女なんてうそ言ってよかったの?
あの人たちに誤解されちゃうから、訂正した方が──」


「偽彼」


私の声を遮るように、明希ちゃんがなにかをつぶやいた。


「え?」と聞き直そうとした寸前で、明希ちゃんがこちらを振り返った。


「俺、ヒロの偽彼になるよ」