「弘中くんを誑かしたらどうなるか、わからせてあげなきゃ」
「音楽室、今使ってないんじゃなかった?」
「音楽室連れてこ」
口々に言い始め、さっき私に問い詰めてきた先輩が私の手首を掴んだ。
「来なさいよ、ほら」
「……やめてください」
「弘中くんのことを誘惑しようとした、あんたが悪いんだからね」
だめだ。まともに取り合ってもらえる雰囲気ではない。
このままじゃ、本当に音楽室まで連れていかれてしまう。
「っ──」
食い込むほどに握りしめてくる手を振りほどこうとした、その時。
ぐっと後ろから、引き寄せられるように肩を掴まれて。
背中が、トンとなにかにぶつかる。
なにが起きたかわからず、思わず目を瞠る。
すると。
「この子のこと、あんまりいじめないでくれる?」
すぐ近くから降ってきた、聴き心地のよいその声は──。
「明希ちゃん……」
顔をあげれば、整った顔とアッシュブラウンの髪が煌めいて見えた。


