明希ちゃんがリップを塗ってくれた唇で、そっと弧を描く。
「ありがとう、明希ちゃん」
「どーいたしまして」
こんなにもらってばかりなんて、なんだか申し訳ない。
私は、こんなふうに明希ちゃんになにかを与えることができていただろうか。
「明希ちゃん、誕生日いつ?」
「俺は4月」
よりにもよってな返しに、思わずがくっと肩を落とす。
……なんてことだ。
4月なんて、とっくに過ぎている。
今すぐお礼がしたかったのに。
「会いに来てくれた上に、こんなプレゼントまでもらって……どうお礼をしたらいい?」
爪先をもじもじと動かしながら、上目遣いでそう尋ねれば、膝に肘をついた笑顔の明希ちゃんが軽く答える。
「んー? ちゅーでいいよ」
「え?」
「なーんちゃって」
余裕げに笑った明希ちゃん。
だけど次の瞬間、彼の笑顔が視界から消えた。
──ちゅっ。
わずかなリップ音が静かな部屋に微かに響く。


