「ヒロちゃーーん! お着替えできた!」


突然開けられたドアに、私たちの距離はあと数センチというところで固まる。


白いワンピースに、ネズミの耳飾りをつけた希紗ちゃんが、こてと首を傾げた。


「あれ〜? なにしてるの?」


「はは、にぃにとヒロちゃんのヒミツ」


純真無垢な希紗ちゃんの問いに、いたってなんの邪な気もないというように王子様スマイルで返す明希ちゃん。


「ね? ヒロ」


同意を求められ、こくこくと頷く。


体を起こし際、明希ちゃんが大きな手を私の頭に乗せた。

そして、私にしか聞こえないボリュームで囁く。


「残念。続きはまた今度」


「……っ」


「おー、希紗お着替えできたかー」


明希ちゃんが、希紗ちゃんの元へ歩いていく。


だけど私は、体を後ろに倒したまま、すぐには動くことができなくて。


おかしい。人には惑わされない、この私が。

……今はこんなにも乱されまくってる。