「明希ちゃん……?」


思わず体を硬くすると、明希ちゃんが耳元で息を吐き出した。


「よかった、見つけられて……」


耳にかかる明希ちゃんの息が荒い。

肩は大きく上下に揺れている。


……もしかして、走り回って探してくれたのだろうか。

もっとわかりやすい場所にいればよかったかな。


「スマホ落ちてたから、だいぶびびった」


いつも落ち着いた明希ちゃんの、少しだけ乱れた声。


言われてみれば、たしかにスマホが入っていたはずのスカートのポケットが軽い。

猫を追いかけている最中に、落としてしまったのだろう。


「ごめんなさい」


「無事なら、それでいい」


まるでその言葉を噛みしめるように、吐息混じりに明希ちゃんがつぶやく。