そして、数十分後。

ぐるぐると喉を鳴らし、グレーの猫は気持ちよさそうに私の手に撫でられていた。


最初は逃げ回って、まったく相手をしてくれなかったものの、猫が疲れた隙にすかさず撫でてやれば、あっという間に懐いた。


「……可愛い」


象の形をした滑り台の裏側で猫の腹を撫でていると、不意にどこからか音楽が聞こえてきた。


その音楽は公園の中央のスピーカーから聞こえてくる。

6時になり、子供たちに帰宅を促す市内放送だ。


空は、いつの間にか黒を纏い出している。


もうこんな時間。

明希ちゃんと別れて、1時間半ほどが経った。


ここから学校まで往復30分ほど。


明希ちゃん、遅いな。

なにかあったのだろうか。

電話した方がいいかな。


空を見上げ、そんなことを思った、その時。


「ヒロ……っ」


私の名を呼ぶ声が、どこかから聞こえてきた。


「あ、明希ちゃん」


こちらに向かってくる明希ちゃんの姿を見つけ、立ち上がった次の瞬間、明希ちゃんがすぐそこまで迫ったかと思うと。


「……っ」


ガバッと覆いかぶさるように、私の体を強く抱きしめてきた。