「大が私の世界の中心でした」
つぶやけば、しんとした重い空気が部屋を包んだ。
壁にかけられた時計の秒針の音だけが、やけにうるさく主張してくる。
そんな間合いを取りなすように、おばさんが持ち上げたトーンで聞いてきた。
「最近どう? 歌とギター、やってる?」
そのトーンとは裏腹に、それはずしっと心に刺さる質問だった。
おばさんがせめて明るい話題を、と思って切り出してくれたということは痛いほどわかっているし、聞かれるだろうなと想定してもいた。
それなのに、正直な答えを出すのに声が詰まってしまった。
「……事故以来、歌えなくなって……。
私だけ歌っているのは、大に悪いから」
外ではいよいよ雨が降ってきたらしい。
雨がガラス窓を打つ音を背中で感じる。
傘を持ってくるんだったと、頭の端っこで一瞬悔やむ。


