忘れかけていた大の匂いが私を迎えた。
家の中は、記憶のままだった。
それはまるで、家の中だけでも大の面影を必死に残そうとしているようで。
うまく言えないけれど、おばさんとおじさんがふたりきりで暮らしている家だとは思えなかった。
おばさんに促されるままリビングのソファーに座ると、コップに注いだ麦茶を持ってきてくれたおばさんが、テーブルを挟んで反対側に腰を下ろす。
「ごめんなさい。来るの、遅くなって」
「ううん。やっぱりショックだったよね」
私が何度も命をなげうとうとしたのを知っているということが、言葉の端々や私へやる視線から感じられた。
重くのしかかってくる空気に耐えられなくなって、私は視線を落とした。
コップに注がれた麦茶には、眉をハの字にした自分の情けない顔がゆらゆら揺れて映っている。


