突然ドンッと背中を押され、真っ暗な穴に突き落とされたかのような感覚に陥る。
明希ちゃんが、明希ちゃんが──?
立ち尽くしているはずなのに、気持ちばかりが焦って目の前の景色が揺れる。
息の吸い方さえ分からなくなる。
まるで意識が遠のいていくようだ。
怖い。怖い。怖い。
もしも大のようなことになってしまったら――。
現実を現実として受け止められず、目の前の世界から逃げだしてしまいたくなる。
と、その時。
――『ヒロ』
まるで一筋の光のように、明希ちゃんの声がふと心の中に差し込んできた。
『俺がいる。
大くんの代わりになんてなれないかもしれないけど、ヒロの声には気づけるから』
「明希、ちゃん……」
……そうだ。違う。明希ちゃんと大は違う。
彼がくれた勇気が、臆病者の背中を押した。
足の裏に力を込めた。
そして、踵を返して力強くアスファルトを蹴りだす。
私はそのまま脇目も振らず市内の総合病院へ走った。
行き交う人々が、何事かとこちらを振り返ってくる。
私たちを取り巻く世界はいつだって、なにごともなかったかのように時を進める。
頭の中を巡るのは最悪な状況ばかりで、考えれば考えるほど苦しい。
どうしたって心を冷やす恐怖しかない。
股より下が鉛のように重くて、前に進めている感覚を感じられない。
それでも足は止めず、息が上がるのも気づかないほど無我夢中で走り続けた。


