寝ても覚めても、というのはこういうことを言うのだろう。

高校の課題に取りかかろうとしても、三時のおやつで七段のパンケーキを食べていても、明希ちゃんのことが頭から離れない。


気分を変えるため、私は部屋着からカジュアルなワンピースに着替え、散歩がてら行きつけのCDショップを覗いてみることにした。


夢の中をあてもなくたゆたうような足取りで家の外に出る。


十月の空は眩しく晴れわたり、風の熱い吐息が肌をじわじわと刺す。


なんとなく人の多い方に足を向ける気にはなれなくて、駅前を通るルートを避け、わざと閑静な住宅街を通ることにした。

風に当たりたかったから、遠回りするくらいがちょうどいい。


ひとけのない道をゆっくり進みもう少しで目的地というところで、不意に曲がり角の向こうから飛びだしてきた小学校低学年らしき少年と少女が、楽しそうな笑い声をあげて私の横を通り過ぎていった。


ふたりが起こした無邪気な風が私の髪を揺らしていく。


そして見知らぬふたりは、私の心をあの日の面影に縫い止めた。


「大……」


――今もまだ私の心の中にいる人。

どんなにたくさんの男の人と出会っても、好きという感情は彼に対してしか芽生えなかった。