どうして笑われているのかわからず、きょとんとしていると。


「じゃあさ、明日会った時の合言葉、決めようか」


彼が突然そんな提案をしてきた。


「合言葉?」


「俺の名前は、弘中明希。
君の名前は?」


弘中明希。

聞いただけじゃ女の子だと勘違いしてしまいそうな名前だと感じながら、私は答えた。


「高垣、未紘」


「んー、じゃあ、ヒロ」


「え?」


「他の人にヒロって呼ばれてる?」


私は首を横に振った。


「それならヒロって呼ぶよ、これから。
ヒロも、俺にあだ名付けて」


「……じゃあ、明希ちゃん先輩」


私の提案に、彼がくしゃっと端正な顔を柔めて笑う。


「明希ちゃん呼びはされたことないかも。
でも、先輩もいらないし、敬語もいらないよ」