「〝ファン1号くん〟は元気?」


「ナツは元気だよ、相変わらず」


「まだ、会えない?」


「ん、ごめんね」


紙パックのコーヒーミルクを飲んでいた明希ちゃんが、眉を下げ、控えめに笑った。


〝ファン1号くん〟の話をすると、明希ちゃんはいつもなんだからしくない反応をする。

少しだけ、よく見ていなければ気づかないくらい微かに、痛みの混じった表情を浮かべるのだ。

どうらしくないのか具体的には言えないけれど。


その表情を見つけると、なんだか〝ファン1号くん〟のことを迂闊に聞けなくなる。


離れて暮らしていると言ったけど、どこに住んでいるのだろう。


聞きたいことは山程あるけれど、また会いたい気持ちと、漠然とした明希ちゃんを傷つけそうな予感に板挟みになって、身動きが取れなくなる。

〝ファン1号くん〟のことは知りたいけれど、それによって明希ちゃんのことを傷つけてしまうのなら、それは本望ではない。