すると不意に、私は抱きしめる腕に力が込もった。
それは、私を離すまいとするような、とてもとても切実な力だった。
「だから、頼む。もう死のうとしたりしないで」
「……っ」
ああ、こんなにも悲痛な声で、こんなことを言わせてしまったなんて。
「うん、ごめんなさい」
「ううん」
そう言って明希ちゃんが、すんと鼻をすすった。
声が、微かに湿っている。
「なんで明希ちゃんが泣いてるの」
「君が泣かないから。
ヒロも泣いたっていいよ。俺、忘れっぽいから大丈夫」
わざとおどけた空気を纏って、そう言う明希ちゃん。
「なにそれ」
明希ちゃんの慰め方に、思わず少しだけふっと笑ってしまう。
くしゃりとした顔を見せるのがなんだか気恥ずかしくなって、私はさらに深く明希ちゃんの胸元に額を押し当てた。
私のそれとはリズムの違う明希ちゃんの鼓動を拾い取る。
「……ありがとう、明希ちゃん」
気づかなかったけど、多分私はずっと助けてほしかったんだ。
無理やり押し込めた、行き場のない悲痛な気持ちを、だれかに受け止めてほしかった。
「さてと」
不意に頭上から、重力を抜ききった茶目っ気たっぷりな声が降ってきた。
「授業、サボっちゃおっか」


