こうやって私は、だれにも求められずどこにも馴染めず、居場所を自ら手放してきてしまった。
どこかで修正しなければいけないと思ったこともあった。
でも、こんな生き方しかできなかった。
「……生きている理由が、わからないの……っ」
明希ちゃんの制服を握りしめ張りあげたのは、暗闇の中で泳ぎ方が分からずもがいていた私の、行き場のない心の叫びだった。
──助けて――。
声を出さず、そう縋る。
すると明希ちゃんは声の強さはそのままに、穏やかに紡いだ。
「生きてる理由なんてそんな大層なもの、なくていいよ。
もしかしたらある日、突然見つかるかもしれない。
だって明日はなにが起こるかわからないんだから」
風が、いつの間にか優しい温度となって、私たちを包み込んでいた。
「ゆっくりでいい。
立ち止まっても、間違ってもいい。
ヒロの人生は、ヒロのものだ」
それはまるで魔法の言葉みたいに、心を抉っていた傷を一瞬で修復してしまった。
もうなにをしたって治らないと思っていたのに。
明希ちゃんは、息が詰まりそうなほど重くのしかかっていた圧力を、あっという間に取り払ってくれた。
「明希、ちゃん」


