──大型バスに乗っていた大は、全身を強く打ち、病院に運ばれた。

だけど治療の甲斐も虚しく亡くなったと、大の家族が引っ越したあとで聞いた。


好きだと告白もさせてくれずに、大は私を突き放したまま、いくら手を伸ばしても届かないほど遠くへ行ってしまった。


「大型バスの事故に巻き込まれて、亡くなったの。
だから私は大を忘れないために、あなたを利用してた……っ」


今まで出したことがないほどの音量で声を荒らげる。


あんなに好きだったのに、あんなにずっと隣にいたのに、記憶の中の大の姿がぼやけていく。

怖かった。そんな自分が。

大がいない毎日に順応してしまっている自分が。


そんな現実を受け入れることができなくて、私は大の姿を、必死に日常生活の中に映し出すようになっていた。

忘れまいともがくように、大がいる毎日を必死に続けようとしたのだ。


だけど私が知ってる大は、学ランのままで。

背も伸びなくて。

電話をかけても、スマホが使われていない電子音声が返ってくるだけ。

優しかった頃の大ではなくて、突き放した時の大の言動ばかりしか思い描けなくて。


そんな時、明希ちゃんに出会った。

事故のことを知らない明希ちゃんは、大の存在を肯定してくれた。

だから利用したのだ。

大がいない現実から、逃避するために。