「え?」


口に出してしまえば、それはとても呆気ないものだった。


目を見張った彼のいつも落ち着いている声が、少し揺れて聞こえた。


「今まで本当にありがとう。
──明日からはここには来ない」


うつむいたままそう続ければ、明希ちゃんがおもむろに体を起こし、水面を滑るかのようなひどく平静な声を紡いだ。


「なんでそんなにつらそうな顔してんの」


彼に言われてはっとする。

私は気づけば、ぎゅっと下唇をかみしめていた。


こんな感情的になるなんて。

だめだ。これ以上ここにいたら、気持ちが流されてしまう。