唐突な衝撃にはっとして視線を下げたのと同時に。


「どこ行くの、ヒロ。
寝込み襲うんじゃないの?」


突っ伏す腕からガラス玉のような瞳だけを覗かせて、明希ちゃんが甘い声でそう言った。


「俺、ちょっと期待してたんだけど」


握った私の手首を少し揺らしながら、明希ちゃんの目がいたずらっぽく緩くカーブを描く。

出会った頃から変わらない明希ちゃんの優しい瞳の色に、鋭利な針が刺さったかのようにズキンと胸が痛む。


「……明希ちゃん」


今にも消え入りそうな声で名前を呼んだ。


「ん?」


私を見つめて、どんな小さい声も拾い、続きの言葉を待ってくれる明希ちゃん。


窓から冷たい風が吹き込んできて、同じ風が私と明希ちゃんの髪を揺らした。


「偽彼、もう解消しよう」