ズキッと胸が痛んで、彼から目を離せないでいると。
「さ、行こ。チサ」
彼が彼女の名前を呼んだところで、はっと意識が現実に引き戻される。
……あ。次、私の番だ。
できるだけ素早く断らなきゃ。
カップルを送り出し、カメラマン役のスタッフの人がこちらを振り返った。
「お客様、お写真を……」
そう言いかけて、案の定、私に連れがいないことに気づいたのか曖昧な表情がにじんだ。
「あ、おひとりさまですか?
チケット、ふたり分になりますが……」
「大丈夫です」
なんでもないことのように、平坦なトーンでそう答えようとした、その時。
「──すみません、遅れました」
突然聞こえてきたそんな声とともに、ぐっと肩を抱き寄せられていた。