一章:つぼみの実る頃

あの冬、私は恋をした。
夜も眠れない..こんな事は初めてだ。
考えるたび、あの人の笑顔を思い出す。

「連立方程式、これは解けるようにしとけよぉ、受験にでるぞ!」

 数学の井之上が黒板に書かれた式を赤チョ
ークでぐるぐると囲んだ。
赤いジャージの襟なんて立てて、超きもい。
 なんて思いながら窓越しに映るサッカー部の慧宮くんを見る。

「はぁ、彼ってかっこいいなぁ~」

そう思う刹那、授業の終わるチャイムが鳴る。
授業を放置して私は、彼を見てしまっていた。

「なんでだろう?慧宮くんとは、一切、話した事がないのに彼への想いが強くなっていく。」

そう想いながら、帰る準備をしようとした時。

「お~い、紫希?」

教室の扉を生きよいよく開けたとともに、
幼なじみのよっちゃんが来た。
 正直、よっちゃんには、あきれていた。

「ねぇ~、大きな声で名前を呼ばないでって前にも言わなかった?」

文句を言いながらも、わたしはほっちゃんの元へ向かう。

「ちょっとついて来て。」

そう言われるがままに私はついていった。
そうして連れてこられた場所は中庭だった

「どうしたの?こんな所に来て。」

そう言葉に出した瞬間よっちゃんから意外な一言が出てきた。

「紫希....好きなんだけど..付き合ってくれない?」

冷たい風が吹き、新しい葉っぱが生えた木が静かに揺れ動き、人のいない中庭に幼なじみの声が響く。

「はぁ?..えっ、..本気?」

驚いた私はそう言うしかなかった。