理解不能な行動を取った佐野に思わず叫び声を上げると、周りで下校していた生徒がザワザワと騒ぎ始めた。


「は?まじで?」

「いやいや冗談キツいって(笑)」


そう言って仲間の不細工軍団も笑いながら佐野に話し掛けるが佐野は真顔。
 

「なんか文句でもあんの?」


そう言って不細工軍団を睨みつけた。



『ちょちょちょ!ちょっと待って!意味わからん!意味わからんのだが!!』


私は佐野の胸板を思いっきり押して、腕の中から抜け出す。


『あのさぁ!文句とかの前に同意してないんだけど!』

「は?」

『いや落ち着いて考えてみろよ初対面だぞ?』

「だから?」

『だから?!いやだからじゃなくてさ』 

「あーもうゴチャゴチャうるせえな」


刹那、


「これでいいだろ?」



ふわりと香る香水と煙草の匂い。
少しかさついた唇の感触。
前髪から覗く気だるげな瞳。


「つーことでよろしくなリリィちゃん」


ふと、あの人を思い出したキスだった。