少なくとも、さっきまでは兄は生きていると信じていたから、首に赤いアザの残った兄を見て、現実を無視できなくなってしまった。

本当に死んでしまっていた。

お兄ちゃん。

ぼそっと声が漏れた。呼べば、揺さぶれば、起きそうなほど、なんてキレイなんだろう。

「よお。」って、起きないかな。なんて、一瞬本気で考えてしまった。でもそれは無理。無理なのだ。

死体安置所には、家族の泣き声が響きわたっている。

線香の煙がたなびき、いやに小さい埃のかぶった蛍光灯がかすかに揺れた。すきま風のせい。

兄の足下には、カバンとその時着ていた服が置かれていた。

カバンの中身は、カラッポのお弁当箱と、パックジュースと菓子パンのゴミ、遺書だった。