「あんた、なにやってんのよ!私の同級生になんか用?嫌がってるじゃない!」

私は自分の声とはにわかに信じがたいほどの甲高い声を上げる。

男の人はあっけにとられた顔で呆然と立ち尽くす。

舞は口をパクパクさせながら何か言おうとしている。声は出ていないため、なにも伝わらない。

「あなたもなんとか言いなよ!耳が聞こえないわけじゃないんでしょ!」

舞は一瞬怯えたように顔を歪めたが、すぐに鞄の中からペンとあのスケッチブックを取り出す。

『心配しないでください。これは私と彼の問題なんです。』

そんなこと言われても、心配しないわけにはいかなかった。

私は男の人を睨みつけて、こう言った。

「あんた、舞を泣かせて楽しいの?本当に好きなら無理強いなんておかしい!」

私の剣幕にも怯えることなく、むしろ彼は呆れたようなため息をついた。

「君はさっき舞が伝えたこと、聞いてなかったの?これは僕と舞の問題だ。部外者は君だよ。」

私は言い返せずに唇を強く噛んだ。

「だから、人間は汚らわしい。舞をここにこさせてしまったことがいけなかったのだ。」

私は彼が独り言のように呟いた一言に何か違和感を感じた。

人間は汚らわしい…?

舞をここにこさせた…?ここって、人間の世界ってこと?

「ねえ、今のどういう…。」

「ああ、こっちの話だ。君には関係ない。君は部外者でしかない。わかったら帰れ。」

彼は人っ子一人殺しそうな視線を私に送った。

私は怖い気持ちをかき消すように、精一杯強がり、舌打ちをして走り去るしかなかった。