その日の放課後、いつも通り明里と下校していた。

「朝比奈舞、方向一緒なんだね。」

明里は苦虫を噛み潰したような顔をした。

「明里、朝比奈さんのこと嫌いなの?」

「好きなわけないっしょ。クラスの和を乱さないでほしいよ。」

話さないのには何か理由があるのかも。

そう思ったけど、私は言わなかった。

いつもの交差点で、明里と別れた。

私の前にはまだ、舞がいる。

どこに向かっているのだろうか。

いけないと思いながら、私は舞の跡をつけていた。

私は自分の家の前を通り過ぎるのも気にせず、舞を追う。

閑静な住宅街を通り抜け、少し治安の悪い商店街に行き着く。

「どこに行くのよ…。」

舞は、たくさんの男性に声をかけられる。

あの可愛さなら無理はない。

それを無表情で無視しつつ、一気に商店街を抜ける。

舞がいかがわしい店に入らなかったことに内心ホッとしていると、とある公園に行き着いた。

私は急いで茂みに隠れる。

舞はベンチに腰掛ける。その様子を茂みから伺っていると、舞のもとに1人の男性がやってくる。

「やあ、舞。」

舞は無言だ。

これってやばい状況…なのか?

男性は舞に釣り合うような、端正な顔立ちだ。

「契約守ってくれたら、僕もこんなことしなかったよ?舞。ねえ、結婚してよ。僕のものになって。」

契約…?

舞は首を横に振っている。私は目を疑った。

今までたったの一度だって感情を露呈しなかった舞が泣いている。

ただ声は出ていない。

私は思わず茂みから飛び出した。