優しい君は今日も嘘をつく




私は幸也の手をさりげなく払う。


「なんでもないよ。
まああるとしたら勉強がやばいことぐらいかな?」


心配させないように、わざと明るい声を出して笑った。


「………そっか、何の教科が苦手なんだ?」


一瞬だけ切なげな顔をした幸也だったけど、すぐに微笑みそう言った。


「ほぼ、全部!
だけど1番苦手なのは現代文の小説かなぁ。


登場人物の気持ちとか全然わからないから。」


「確かに、できなさそうだな。」
「ひどい!いくら幸也ができるからってさ。」


………うん、大丈夫。


ちゃんと笑えてるよ私。
だから心配しなくていいから……。


「…………じゃあもう遅いし行くね。
幸也もあんまり頑張りすぎたらダメだよ?」


せっかく走っていた幸也の邪魔をしてしまったのだ。


いつまでも話してるのは相手に悪い。


「待って、家まで送るから。」


………だけど幸也はこうやって私を送ると言ってくれた。