優しい君は今日も嘘をつく




「また、ぼーっとしてる。」


不意に幸也がそう呟き、そっと私の頬に触れた。


それでようやく我に返る私。


………こうやってマイナス思考にとらわれることが多い。


「何か悩み事?」


心配そうに、だけど揺るがないその瞳に私が映っていた。


いっそのこと言ってしまいたい。


…………何を?


千波ちゃんが好きなの?
千波ちゃんと仲良くしないで?


………別れよう?


どれも言えるわけがない。


好きでもない女に嫉妬されてもうざく面倒くさいだけだ。