優しい君は今日も嘘をつく




でも私はね、今の幸也も、昔の幸也も好き。
どっちが良かったかなんて選べるわけない。


いつだって私のそばにいてくれた幸也に、私は感謝しかないんだよ。


「幸也、本当にありがとね。」
「………は…?」


突然の私の感謝の言葉に明らかに戸惑いを見せている幸也。



「ほら、いつだって私のそばにいてくれて。」
「………いきなり何言ってんだよ。」


そりゃあ、いきなりこんなこと言われたらそうなるよね。


でも、もう決めたから……。



「幸也はいつも私のそばにいてくれたけど、もう終わりにしよう……?


勝手なのはわかってる。
でもね………好きな人が、できたの。


ちゃんと好きになれて、頼れる人。」




嘘をついて、幸也が私から離れやすいようにわざと嫌われるような言葉を言う。



幸也の目は大きく開かれる。



「もう、そばにいなくていいよ。
たくさん振り回してごめんね?」



だからどうか、千波ちゃんと後悔しない道を進んでほしい………。


そう思ったのに、それだけは言葉にして言えなかった。