優しい君は今日も嘘をつく





「ねぇ、幸也。」


帰り道の途中で私は幸也の名前を呼ぶ。


「どうした?」
何も知らない幸也は真っ直ぐ私を見つめてきた。


そらしたくなるのを耐え、


「寄り道していい?
幸也と少し話したくて……。」


と言った。



幸也は断らず、いいよと返してくれた。



そして、少し先にある公園のベンチで私たちは座る。


「はい、これ。」


その途中で幸也が冷たい飲み物を私の分まで買ってくれて、渡してくれた。


その小さな心遣いでさえ、今は苦しい。


「………ありがと。」


なるべく心情を読み取られないように、笑顔をみせる。